実務情報・研究<もくじ>

 〜実務情報研究の目次〜

遺産相続代襲相続と株分け説 
遺産相続縁組前の子と縁組後の子の代襲相続 
遺産相続相続人の資格の重複 
遺産相続相続の方法を選択する権利の承継 
遺産相続相続人の一人に相続財産を集中したいとき 
遺産相続相続財産に関する費用とその範囲 
遺産相続特別受益制度(相続人への遺贈) 
遺産相続特別受益制度(相続人への生前贈与) 
遺産相続遺産分割協議の瑕疵(参加すべき相続人が参加しなかった等) 
遺産相続遺産分割協議の合意解除(遺産分割協議のやり直し) 
遺産相続相続人が存在しない場合の相続財産の取扱い 
遺産相続相続財産の範囲(祭祀財産・遺骨・香典・弔慰金)
遺産相続預貯金の相続 
 遺言  〜遺言(自筆証書遺言の方式) 
 遺言  遺言(公正証書遺言の方式) 
 遺言  〜遺言(秘密証書遺言の方式) 
 遺言  遺言(一般危急時遺言の方式) 
 遺言  各遺言方式の共通事項と特別方式の遺言の特則 
 遺言  遺言の効力(遺言能力、効力発生時期、遺言の撤回) 
 遺言  遺言の無効・取り消し(無効原因、取り消しの意義) 
 遺言  遺言の執行と検認(遺言執行、検認手続) 
 遺言  遺言執行者(選任、資格、権限、費用) 
 遺言  相続と遺贈(相続と遺贈の関係、相違点、共通点) 
 遺言  負担付遺贈(負担付遺贈、負担を履行しないとき) 
 遺言  遺留分の範囲(遺留分権者、遺留分率等について) 
 遺言  遺留分の放棄(放棄の制限) 
 遺言  減殺請求の方法 

 

代襲相続〜株分け説

代襲相続と株分け説

 現在、民法887条1項には、「被相続人の子は、相続人となる」と定められ

ていますが、昭和37年の改正前には、「被相続人の直系卑属は、相続人と

なる」と定められていました。つまり、改正前には、孫にも固有の相続権があ

ったのです。

 

 

 例えば、被相続人Aに子BとCがおり、Bには子DとEがいて、BがAより先

死亡していたとします。このような場合に、Aからみて孫にあたるDとEに

も固有の相続権がったということになります。このとき、相続人C、D、Eは、

平等に相続することになるので相続分は、それぞれ3分の1になります。

 

相続相関図B.bmp   

        

 これに対して、D、EがBを代襲相続すると考えると、DとEの相続分は本来

Bが受けるべきであった相続分なので、それぞれ4分の1になります。これを

株分け説といいます。

 

相続相関図C.bmp 

 

 改正法は、孫に固有の相続権がないことを明らかにしたので、株分け説

をとったと考えることができます。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

代襲相続〜縁組前の子と縁組後の子の相続権

縁組前の子と縁組後の子の代襲相続について 

 親が養子縁組をしていた場合、縁組前に生まれた子と縁組後に生まれた子は

代襲相続できるでしょうか?

 

 例えば、AとBが成年養子縁組をして、養子Bには縁組前に生まれたCと縁組後

に生まれたDがいたとします。その後、Bが死亡し、そのあとにAが死亡した場合、

Bの子であるCとDはBを代襲相続できるかということです。

 

相続相関図D.bmp

                   

 

 相続法には、同時存在の原則という原則があります。これは、被相続人の相続

開始の時点で相続人が存在していなければならないという原則です。 同時存在の

原則からすると、CとDは被相続人Aの相続開始時点で存在しているので、要件を

満たしているようにも思えます。

 

 しかし、民法887条2項には、「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したと

き、又は第891条(相続人の欠格事由)の規定に該当し、若しくは廃除によって、

その相続権を失ったと きは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、

被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。」 とあります。

 

 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけ

るのと同一の親族関係を生じますが、養親は、その時点の養子の親族とは親族

関係に立ちません。つまり、養子縁組の日から、ABは法定血族関係に入ります

が、縁組前に生まれた子CとAは親族関係には立たないということです。

 

 したがって、縁組後に生まれたDは、Aの直系卑属として代襲相続できますが、

Cは代襲相続をすることができません。

  

 参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

相続人の資格の重複について

相続人の資格の重複

養子と代襲相続の重複

 Aには子BとCがおり、Bには子Dがいるとします。Aが孫であるDを養子に

した後、Bが死亡し、その後Aが死亡すると、DはBの子として代襲相続人に

なることができると同時に、Aの養子として相続人になります。このとき、Dの

相続分はどうなるのでしょうか。

相続相関図A1.bmp       

 この場合、基本的にはDに2口分の相続を認めるのが妥当だと言われています。

なぜなら、身分が重複することを民法が認めているため、相続権が重複することも

認めるのが自然であるし、もし、代襲相続の状況にならずにBが生きている場合も、

結果的にDは2口分相続できるので、「偶然の事情による利益・不利益をできるだけ

避けるべし」という相続法の基本原理から外れないからです。

 

養子と配偶者相続の重複

 Aに子BCがおり、Bには配偶者Dがいたとします。AがDを養子とした場合、

Dは、B死亡のとき(Aは既に死亡しているものとする)、配偶者であると同時

に養兄妹姉妹という関係になります。この場合、Dは二重の資格で相続でき

るでしょうか。

 

相続相関図E.bmp 

 

 

  学説は分かれていますが、基本的にこれらの資格は、民法上排斥しあう関係

にはないため2口分の相続を認めてよいと言われています。

 

嫡出子と非嫡出子の重複

 A(男)には配偶者Bと、Bとの間にできた子Cがいました。また、婚姻外にも

子Dがおり、これを認知したうえ養子としました。Aが死亡した場合、DはAの

非嫡出子であると同時に嫡出子たる養子です。この場合、二重の資格で相続

できるでしょうか。

 

相続相関図F.bmp    

 

 民法上、嫡出子と非嫡出子は両立する資格ではないので、嫡出子たる養子として

のみ相続することができます。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

再転相続

再転相続 

 再転相続とは、相続人が考慮期間中に、相続の承認または放棄を行わないま

ま死亡してしまった場合に、その死亡した者の相続人が、前相続人の承認・放棄

する権利を承継取得することをいいます。

 

 例えば、Aが死亡し、Bがその相続人となったが、Bは相続放棄も限定承認もせ

ずに熟慮期間内に死亡し、Bには相続人Cがいるとします。この場合、A→Bと

B→Cの相続が存在しますが、Bの相続人となったCは、Aの相続に関するBの

放棄・限定承認の権利を承継取得し、Aの遺産の相続に関する相続の方法

(単純承認・限定承認・相続放棄)を選択することができます。 

 

相続相関図G.bmp 

 Aの相続分は放棄したいが、Bの相続分は相続したいときなどは、CはA→B

の相続だけを放棄し、B→Cの相続を承認することもできます。 ただし、B→C

の相続を放棄した場合はBの有していたA→Bの相続の方法の選択権

を失うので、A→Bの承認することはでません。つまり、Aの相続分だけを

相続し、Bの相続分は放棄することはできないということです。

 

 なお、熟慮期間は、Cが自己のために相続の開始があったことを知った

時から起算され 、CがBの死亡を知った時から3カ月になります。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

事実上の相続放棄

事実上の相続放棄

 相続放棄は、被相続人が債務超過に陥っている場合などに行われますが、それ

以外の理由から相続放棄が行われることもあります。たとえば、共同相続人の中

の一人に相続財産を集中させるために他の相続人が相続放棄をするような場合

です。農業経営で土地の細分化を防ぎたいときなどに行われます。

 

 

 一人の相続人に相続財産を集中させる方法は、相続放棄の他にも方法があり

ます。遺産分割協議において、一人の相続人に遺産を集中するような分割の合

意をすることです。 これには以下の2つの方法があります。 

 

  @1人の相続人を除く他の相続人が、すでに被相続人から充分な生前贈与

   を受けているとして(特別受益)、自分の受益はゼロであるという証明書

   (相続分皆無証明書)を作成し、これを相続登記申請書に添付する方法。

  A1人の相続人が遺産のほとんどを取り、他は名目的な財産を取ることを

   内容とする「遺産分割協議書」を作成・添付して相続登記する方法。

 

 これらの手段は、事実上、相続放棄と同様の結果をもたらすことができるので、

事実上の相続放棄と呼ばれます。正式な相続放棄とは違い、原則として裁判所

は関与しないため、手続が簡単であることなどから、現実的には正式な相続放棄

りも事実上の相続放棄のほうが多くなっています。

 

 ただし、債務を1人だけに承継させるためには、債権者からの同意が必要

なり、同意がない限りは他の共同相続人は法定相続分相当の分割債務を免れるこ

はできません。

  

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

相続財産に関する費用

相続財産に関する費用

相続財産に関する費用について

 民法第885条では、相続財産の保存・管理に必要な費用などの相続財産に関する

費用について、「相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。」と規

定されています。

 

 しかし、単純承認の場合、相続人は、「相続開始の時から、被相続人の財産に

属した一切の権利義務を承継」(民896条)し、「遺産の分割は、相続開始の時

にさかのぼってその効力を生ずる」(民909条)ので、各相続人固有の財産と

続財産に関する費用を支弁するための相続財産が無くなってしまいます。

 

 そこで、相続財産に関する費用は、被相続人が負っていた債務ではありませんが、

相続財産が負担する債務という意味で相続債務の一種であると考え、相続人の一

人が管理費用を立て替えた場合などは、その費用債務(立替金の求償債務)は相続

債務として、法定相続分に応じて各相続人が負担します。ただし、相続人の過失によ

る管理費の支出などに関しては、当該相続人の負担になります。

 

 また、民法第885条2項の「前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺によ

って得た財産をもって支弁することを要しない。」という規定により、遺留分権者

を保護す目的から、贈与の減殺によって得た財産からは、相続に関する費用

を支弁する負担は負わないとされています。

 

相続に関する費用の範囲

 相続財産に関する費用としては、固定資産税や火災保険料、相続不動産の保存登

記費用等遺産の保存の為に必要な費用、修繕費などの有益費、果実収取のための

必要経費、鑑定、換価、弁済、その他清算に必要な費用、財産目録調整の費用、管

理清算のための訴訟費用などがあります。

 

 その中でも相続税・葬式費用については、判例や学説が分かれていますが、相続

税については、相続財産の取得に関する課税であるから、相続財産を取得し相続

人個人が負担するべきであるとされており、葬式費用については、喪主が負担すべ

であるといわれています。

              

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

特別受益〜相続人への遺贈

特別受益〜相続人への遺贈について 

 共同相続人の中に、被相続人から、婚姻の費用、事業の資金援助、住宅購入資

金などについて生前贈与を受けたり、被相続人から遺贈を受けた者(特別受益者

がいる場合に、これを考慮せずに、相続分を計算することは他の相続人との間で不

公平になってしまいます。

 

 そこで、相続分の計算の際に、被相続人から生前贈与や遺贈を受けた分を考慮

することによって、相続人との公平を図る制度を特別受益制度といいます。  

 

 なお、特別受益として考慮されるのは、被相続人から相続人に対する生前贈

与か遺贈です。ですから、原則、相続人でない者に対する生前贈与や遺贈は

外になります。

 

相続人への特定遺贈

 被相続人A(夫)に配偶者B(妻)と子供C、Dがいたとします。Aの遺産が

1200万円だとして、Aは遺言によりCに100万の車を遺贈していた場合、

相続分はどのように算定されるでしょうか?

 

 

 この場合の法定相続人はB、C、Dですが、法定相続分通りに計算する

と、各相続人の相続分は以下のようになります。

  B:1200万円×1/2=600万円

 

  C:1200万円×1/2×1/2=300万円

 

  D:1200万円×1/2×1/2=300万円

 さらに、Cは100万円の車を遺贈されているので、これを控除すると、

  C:300万円−100万円=200万円

となります。なお、特別受益分(100万円の遺贈額)を調整し算定した

ものを、相続人本来の権利の割合を表す「相続分」(法定相続分など)

と区別するため、具体的相続分といいます。

 

 この具体的相続分額の割合で、動産・不動産・債権などで構成され

る実際の遺産を分配します。この割合の事を、具体的相続分率とい

います。

  B:600/1100

  C:200/1100

  D:300/1100

 

法定相続分を超える遺贈

 遺贈の価額が、法定相続分を超えた場合は、どうなるでしょうか?

たとえば、上記の例のCへの遺贈が400万円の車だった場合は以

下のような処理になります。

  B:1200万円×1/2=600万円

    

  C:1200万円×1/2×1/2−400万円=−100万円(0円

 

  D:1200万円×1/2×1/2=300万円

Cはマイナスの分を返す必要はありませんが、具体的相続分は0に

なり、相続を受けることはできません

 

 ただ、ここで問題になるのは、マイナスが出たことにより各相続人

の具体的相続分額に遺贈額を加えた金額が1300万円となり、10

0万円不足してしまいます。 そこで、ここで算出された具体的相続分

額の割合に対応する形で、現実の遺産を分配します。

 

 まず、各相続人の具体的相続分額(Bの相続分600万円、Cの

分0円、Dの相続分300万円)を計算上の遺産総額で900

万円で割ることによって具体的相続分率を算出します。

B:600/900=2/3

C:0

D:300/900=1/3

 

 そして、この割合で実際に分配可能な財産額800万円(1200万円

−Cへの遺贈額400万円)を分けることによって、最終的に相続される

額を計算します。

B:800万円×2/3=約533万円

C:0

D:800万円×1/3=約267万円

 

※ただし、これ以外の計算方法を支持する学説などもあります。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」 

特別受益〜相続人への生前贈与

特別受益〜相続人への生前贈与

特別受益となる贈与

 民法第903条には、遺贈の他に「婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本とし

て」なされた生前贈与も特別受益となると規定されています。特別受益制度は、相続

人間の公平を図る制度なので、相続人間で不公平になるような高額な贈与は、原則

、全て特別受益になります。

 

 例えば、相続人の一人が家を買って頭金などの住宅資金を出してもらったときや大

学の授業料を出してもらったとき、会社設立のための開業資金や事業資金を出して

もらったとき、高額な結婚費用や高額な生活費用をもらったときなどがそうです。

 

 また、生命保険金や死亡退職金は生前贈与ではなく、原則、特別受益ではありませ

んが、共同続人の一部だけが不公平と見られるほど高額な生命保険金、死亡退職

金を受け取っている場合には、特別受益とみなされることもあります。

 

 通常の扶養や小遣い、結婚祝い、新築祝いなどは、原則、特別受益にあたりま

ん。

 

贈与の持ち戻し

 生前贈与による特別受益があった場合、特別受益を受けた相続人と特別受益を受け

なかった相続人間の不公平を是正するため、贈与の価額を被相続人が相続開始時

おいて有した財産の価額に加え相続財産とみなしますこれをみなし相続財産

いい、生前贈与した価額を計算上、相続財産に戻すことを持ち戻といいます。

 

 各相続人の具体的相続分は、このみなし相続財産の価額をもとに算定します。

なお、遺贈の場合と同様に、生前贈与を受けた相続人に関しては、相続分から

生前贈与の額が控除されます。

 

 例えば、被相続人A(夫)に配偶者B(妻)と子CDEがいたとします。遺産が

1200万円あり、Aは生前Cに住宅購入資金として600万円を贈与していた

とすると、各相続人の相続分は算定するには、まず、1200万円の遺産額に

生前贈与の持ち戻しをします。 

  1200万円+600万円=1800万円

 そして、各相続人の相続分の割合で分けます。

  B:1800万円×1/2=900万円

  C:1800万円×1/2×1/2=450万円

  D:1800万円×1/2×1/2=450万円

 Cの相続分から生前贈与の額を控除します。

  C:1800万円×1/2×1/2−600万円=−150万円(0円

 Cの具体的相続分は0になります。そして、遺贈と同様に、具体的相続分率を割り

出し、実際に分配可能な財産額である1200万円に掛けることにより、最終的な

相続額を算定します。

 ・具体的相続分率

  B:900/1350=2/3

  C:0

  D:450/1350=1/3

 ・最終的な相続金額

  B:1200万円×2/3=800万円

  C:0

  D:1200万円×1/3=400万円

 

債務の控除

 具体的相続分額を算出する計算のもとになる被相続人が相続開始の時にお

いて有した財産が、遺産の積極財産額なのか、そこから相続債務を控除した額

なのかについては、争いがありますが、主に債務を控除しない積極財産額で

あると解されています  

 

特別受益の評価 

 持戻しの対象となる贈与財産が相続開始ときまでにすでに処分されていたり、

壊れて無くなってしまったりした場合や贈与時と相続開始時とで価額が変動し

ている場合はどのように評価するのでしょうか?

 

 民法第904条では、「贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的

である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続

開始の時においてなお原状のままであるものとみなして」と規定されています。

 

 つまり、贈与を受けた人(受贈者)の行為(過失を含む)で、生前贈与を受けた家

屋などが火事で焼失してしまった場合や受贈者が土地の造成を行った場合なども

その目的物が、受贈者の行為の加えられない贈与当時状態のままで存す

るものとみなして評価します。ただし、地震などの天災その他の不抗力によって

受贈者の行為によらず滅失した場合、持戻しの対象にはなりません

 

 また、持戻しの対象となる財産がいつの時点で評価されるかということに関して

、判例は相続開始の時点を基準として評価するとしています。 つまり、贈与さ

れた不動産や金銭などの価額を相続開始時の貨幣価値で評価しなおすというこ

とです。 

 

特別受益を控除しない被相続人の意思

 特別受益の持戻しは被相続人の意思を推測し、相続人間の公平をはかるものと

いえます。 そのため、特別受益に該当する場合でも、被相続人が自ら特定の相続

人を特別扱いする意思を表示したときは、この意思が尊重されます。

 

 つまり、特別受益において被相続人が遺贈又は贈与した額を持ち戻さなくてもよい

と意志表示すれば、生前贈与、遺贈を考慮せず残りの財産だけを対象に分配を行

うことも可能です。これを、持戻しの免除といいます。

 

 ただし、遺留分の規定に反する持戻しの免除の意思表示については、遺留分

殺請求権の対象となります

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

遺産分割協議の瑕疵

遺産分割協議の瑕疵

 遺産分割協議は、法定相続人全員の意思が合致しなければならず、協議が

成立する限りは、どのような内容の遺産分割がなされてもよいことになってい

ます。では協議に瑕疵があった場合はどうなるでしょうか?

 

協議が参加すべき相続人を除外してなされた場合

 参加すべき相続人を除外してなされた分割協議は無効であり、やり直しをしなけれ

ばなりません。ただし、相続の開始後認知によって相続人となった者が、他の共

同相続人がすでにその分割その他の処分をしたあとに、遺産の分割を請求しようと

する場合には、遺産分割の無効を主張したり分割のやり直しを求めることはできず

、価額による支払の請求しかできません。

 

 認知によって相続人となった者(被認知者)以外の他の共同相続人が、被相続

直系尊属または兄弟姉妹だけであった場合、これらのものは認知によって

相続権を有しなかったことになるので、被認知者は相続回復請求権を行使し、遺産

の回復請求をすることができます。

 

分割協議における瑕疵ある意思表示等

 分割協議において瑕疵ある意思表示(詐欺・強迫)意思表示の重要な要素

に関する勘違い(錯誤)などがあった場合は、民法総則の適用があり、無効や取り

消しを主張することができます。

 

 特に第三者への影響が大きい錯誤による無効の認定は慎重になされます。ただし、

当事者の意思表示が要素の錯誤に基づく場合であっても、それが重大な過失に基

づくときは無効とはなりません。

    

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

遺産分割協議の合意解除

遺産分割協議の合意解除

 相続人全員の合意のもと一度成立した遺産分割をやり直すことはできるかとういう

問題ですが、最判平成2年9月27日(民集44−6−995)は 、共同相続人の

が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した

上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものでは

ないと判示しており、共同相続人全員の合意があれば、合意解除は認められ

ると解されています。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

相続人の不存在

相続人の不存在

 相続人が存在しない場合には、相続財産はどうなるのでしょうか?民法第951条

では、「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

とされており、 これを相続財産法人といいます。

 

 相続人のあることが明らかでないき(相続人全員が相続放棄をして、結果として

相続する者がいなくなった場合も含まれる。)に、家庭裁判所は、利害関係人(被相

続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)または検察官の請求

によって、法人の代表者とな相続財産管理人を選任します。

 

 相続財産管理人は、被相続人の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなど

して清算を行います。同時に、相続人の捜索(相続人の捜索の公告)も行い、結局

相続人が現れなければ、清算後に残った財産は特別縁故者(内縁の妻など法律

は相続人ではないが、実際上被相続人と深い縁故を持っていた者)や国庫

に帰属します。 

 

 もし、相続人のあることが明らかになったときは、相続財産法人は、最初から成立

しなかったものとみなされます。ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為

は有効です。

 

            

 なお、相続人はいないが遺産の全部を遺贈された受遺者がいる場合が相

人の不存在に当たるかどうかについて最高裁は、相続人の不存在にあたらな

いとしました。 また、相続人はいるが所在不明の場合は、相続人不存在の問

題ではなく、不在者財産管理の問題となります。           

 

           

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」 

相続財産の範囲〜祭祀財産・遺骨・香典・弔慰金

相続財産の範囲について

祭祀財産・遺骨・香典・弔慰金

 系譜や位牌・仏壇などの祭具、墓石・墓地などの墳墓は相続財産には含まれず、

財産相続とは別のものとして考えます。これらは、祭祀財産と呼ばれ、慣習に従っ

祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。ただし、被相続人の指定に従って

祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継します。(民897条1項)

また、慣習が明らかでないときは、承継すべきものは家庭裁判所が決めます。

(民897条2項)

 

 遺骨についても、判例上、死者の祭祀供養をつかさどる者に帰属するとされてい

おり、相続財産には含まれません。

 

 また、香典や弔慰金は、主に死者の家族の負担を軽減することを目的としたもので

あり、慣習上、喪主・遺族への贈与であると考えられるため、相続財産はならない

と解されています。ただし、弔慰金については香典と同様に扱われる場合死亡退

金の一種として取り扱われる場合によって取扱いが異なります。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

預貯金の相続

預貯金債権の相続と名義書換え

判例と金融機関の実務

 判例によると、預貯金等の金融機関に対する被相続人の債権は相続開始と同時

に、法定相続分に応じて各相続人に移転するとされています。

 

 判例の立場に立てば、各相続人は金融機関に対して自分の持分に応じた権利

(払戻し請求など)を取得するということになります。つまり、各相続人から単独で

自己の相続分について払戻請求ができるということです。
    

 しかし、金融機関の実務上の取扱いとしては、判例の立場とは違い相続預

金の払戻しに関しては厳格な手続きが要求され、相続人全員の同意書や遺

産分割協議書などの提出がなければ払戻請求には応じてくれません

 

払戻し手続き 

 銀行・郵便局などが被相続人の死亡を確認すると預貯金の口座は凍結されます。

預貯金の口座が凍結されると一定の手続きを行わなければ払戻しを受けることが

できません。

 

一般的な払戻手続きは次のとおりです。 (※金融機関によって必要な書類が異

なる場合があります)

遺産分割の前の場合

 遺産分割の前において払い戻し請求をする場合は、以下の書類を金融機関に

提出します。     

@ 金融機関所定の払い戻し依頼書

   (相続人全員の署名、実印の押印があるもの)

A 相続人全員の印鑑証明書

B 相続人の戸籍謄本及び被相続人の除籍謄本

   (相続人の範囲を確認しうるもの)

C 預金通帳または預金証書及び届出印  

遺産分割後の後の場合

 遺産分割が行われた場合には、被相続人の預貯金は遺産分割協議書(家庭裁

判所の調停、審判による場合は調停調書、審判書)の内容に基づいて相続開始時

に遡って各相続人に帰属し、当該相続人は、金融機関に対し以下の書類を提出す

ることにより払い戻 しを受けることができます。

@遺産分割協議書

 (相続人全員の署名、実印の押印があるもの) 

A金融機関所定の払い戻し請求書

 (相続人全員の署名、実印の押印があるもの)

B相続人全員の戸籍謄本及び被相続人の除籍謄本

 (相続人の範囲を確認しうるもの)

C相続人全員の印鑑証明書

D預金通帳又は預金証書及び届出印 

調停・審判に基づく場合

@家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本(確定証明を添付)

A預金を相続した人の戸籍謄本、印鑑証明書

B預金通帳又は証書と届出印  

遺言書に基づく場合(遺言執行者のいないとき)

 被相続人は遺言によって、預貯金を特定の相続人または第三者に遺贈するこ

とができます。この場合、受遺者が金融機関に対してその払戻しを請求する際に

必要になるのは次の書類です。

@遺言書又はその写し

 (公正証書遺言以外の場合は家裁の検認調書を求められることがあります)

A遺言者の除籍謄本

B預金通帳又は証書 

C受遺者の印鑑証明書

 なお、金融機関によっては、このほかに相続人全員の同意書(並びに印鑑

証明書)の提出を求められることがあります。

遺言書に基づく場合(遺言執行者がいるとき) 

 遺言執行者がいる場合は、預金の払戻等の手続きは遺言執行者が行い各相続人

は遺産を処分することはできません。

@遺言書又はその写し

A遺言執行者が家庭裁判所で選任された場合はその審判書謄本

B被相続人の除籍謄本

C遺言執行者の印鑑証明書

D遺言執行者名義の払戻依頼書

 なお、金融機関によっては、このほかに相続人全員の同意書や依頼書(並びに

印鑑証明書)の提出を求められることがあります。

 

参考文献:「改訂遺産分割実務マニュアル 東京弁護士会法友全期会相続実務研究会 」

遺言〜自筆証書遺言の方式

遺言〜自筆証書遺言の方式について

自筆証書遺言の特徴 

 自筆証書遺言とは、遺言者が、全文、日付、氏名を自書し、押印して作成する

遺言です。自筆証書遺言の特徴としては以下のものがあげられます。

・メリット

 @自分で書けばよいので費用もかからずいつでも書ける

 A遺言の存在自体を秘密にできる

・デメリット

 @紛失・偽造・変造の危険性がある

 A内容に不備などがあれば無効になる可能性がある

 B遺言の執行に家庭裁判所の検認手続が必要とされる。

 

自書の意味

 遺言者の自書が要求されるのは、遺言の偽造・変造を困難にし、遺言内容が

遺言者の真意によるものである事を担保するためです。 自筆証書遺言の作成に

は証人が必要とされないため、遺言者の自書によって遺言者の意思にもとづくこ

とを明らかにするのです。そのため、パソコンやタイプライターなどによって作

成したものは無効であり、筆も認められません

 

 自書は自筆で筆記する能力(自書能力を前提とします。ただし、視力の喪

失や病気のために手が震えるなどの理由で、運筆に他人の助けを借りても、それ

だけでは自書能力は否定されないとした判例があります(最判昭和62年10月8日

民集41−7−1471)。もっとも、他人が、病気で単独で文字を書けない

遺言者の手をとって、遺言者の声に従って誘導しつつ作成された遺言に

関しては、自書の要件欠くとしました。

 

 なお、カーボン複写の方法によって作成された遺言については、判例上、有効と

されています。

 

押印について

 押印も自書同様、遺言者の同一性及び真意を確認するための手段ですが、使用

すべき印章には制限はありません。そのため、三文判でも有効です。署名の重要性

高まりとともに押印の比重は低下しているといわれていますが、後のトラブル防止の

ためにも実印の方が安心できると言えます。

 

日付について

 日付の記載が要求されるのは、作成時の遺言能力の有無の確認や内容の抵触す

る複数の遺言が発見された場合に、どの遺言が遺言者の最終の意思を記載した

のであるかを確定するのに必要なためであり、これを欠くと無効になります。

 

 また、日付を確定できるような書き方をする必要があり、「○年○月の吉日」な

どの 書き方は日付を特定できないため無効となる恐れがあります

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

遺言〜公正証書遺言の方式

遺言〜公正証書遺言の方式

 公正証書遺言の特徴

  公正証書遺言は以下の方式に従い作成します。

  @証人2人以上の立会いがあること。

  A遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。

  B公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞か

   せ、又は閲覧させること。

  C遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名

   し、印を押すこと。

   ※ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由

    を附記して、署名に代えることができる。

  D公証人が、その証書は以上の方式に従って作ったものである旨を附記

    して、これに署名し、印をおすこと。  

   

 また、公正証書遺言のメリット、デメリットとしては以下のことが挙げられます。 

   ・メリット

   @公証人や証人の面前で作成し、原本は公証役場で保管するため、偽

    造、変造の危険性がない。

   A公証人が関与するため無効になる可能性が低い。

   B家庭裁判所の検認が不要。

   ・デメリット

   @利害関係の無い証人が2人必要

   A費用がかかる

   B公証人と証人には内容が知られてしまう。

   

 口頭主義の緩和

  公正証書遺言は、遺言者は自ら全文を書く必要は無いことから、

以前は、口授・読み聞かせが厳格に要求され、手話通訳や筆談による

事は出来ないとされていました 口頭主義)。

 

  そのため、聴覚や言語機能に障害を持つ者は、公正証書遺言をすることが

 できませんでしたが、平成11年の民法改正により、手話通訳または筆談で

 公正証書遺言をすることが可能になりました。

 

  (公正証書遺言の方式の特則)民法第969条の2

 @口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公

  証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は

  書して、口授に代えなければならない。    

 

 A遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、筆記し

  た内容を通訳人の通訳または閲覧により遺言者又は証人に伝えて、読み

  聞かせに代えることができる。

 

   なお、この改正にあわせて、秘密証書遺言、死亡危急者遺言等の方式

  ついても、厳格な口頭主義を緩和するための改正がなされ、言語機能障害

  者が通訳人の通訳によりこれらの方式の遺言をすることが可能になりました。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

遺言〜秘密証書遺言の方式

遺言〜秘密証書遺言の方式

秘密証書遺言の特徴

 秘密証書遺言とは、公証人や証人の前に封印した遺言を提出し、遺言の存在

は明確にしつつも、その内容については秘密にできる遺言のことをいい、以下の

方式に従ってなされます。

 @遺言者がその遺言書に署名押印すること。

 A遺言者がその遺言書を封じ、遺言書に用いたのと同じ印章を以ってこれを

  封印すること。

 B遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提示して、自己の

  遺言書である旨並びに自らの氏名及び住所を申述すること。

 C公証人がその遺言書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した

  後、遺言者及び証人とともにこれに署名押印すること。

 

 また、秘密証書遺言には、以下のようなメリット、デメリットがあります。

 ・メリット

  @遺言書の内容を秘密にすることができる。(ただし、遺言をしたという事実は

   秘密になりません。)

  Aワープロや代筆での作成が可能。(ただし、遺言者の署名押印は必ず必要)

 ・デメリット

  @利害関係のない証人が2名必要。

  A公証役場での費用がかかる。

  B公証人が内容をチェックできないため無効になる可能性がある。

  C家庭裁判所の検認が必要

 

 なお、秘密証書遺言としての要件を欠いていたとしても、自筆証書遺言としての

要件を満たしていれば、自筆証書遺言として有効になります

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

遺言〜一般危急時遺言(死亡危急者遺言)

遺言〜一般危急時遺言(死亡危急者遺言)

一般危急時遺言(死亡危急者遺言)の方式

 一般危急時遺言とは、疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言

しようとするときに用いられる特別方式による遺言です。なお、特別方式による遺

言は一般危急時遺言の他にも、難船危急時遺言、一般隔絶地遺言、船舶隔絶地

遺言などがあります。

 

 一般危急時遺言は以下の方式 に従いなされます。

@証人3人以上の立会いがあること。

A遺言者が証人の1人に内容を口述すること。

B口述を受けた証人が内容を筆記し、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧

 させること。

C各証人がその筆記した内容が正確なことを承認した後、それぞれ署名押印

 すること。

 

 なお、以上の方式でなされた遺言は、遺言の日から20以内に証人の1人又は利害

関係人から請求し、家庭裁判所の確認を得なければ効力を失います。この手続きによ

って、家庭裁判所は遺言が遺言者の真意にでたものかどうかを判断します。

また、相続開始後には、検認手続も必要です

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

遺言〜各遺言方式の共通事項と特別方式による遺言の特則

遺言〜各遺言方式の共通事項と

            特別方式による遺言の特則

遺言の加除・訂正

 公正証書遺言を除く全ての遺言中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所

を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場

所に印を押さなければその効力を生じません。厳格すぎる面があるので、判例では

和されています。

 

証人等の欠格

 各種遺言で証人等の立会いが要件とされていますが、次に掲げる者は、遺言の証

人又は立会人となることができないとされています

(証人及び立会人の欠格事由)民法第974条

@未成年者
A推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
B公証人の配偶者4親等内の親族書記及び使用人

 

共同遺言の禁止

 共同遺言とは、同一の遺言書に相関連する内容の意思表示を2人以上の者

が共同でする遺言のことをいいます。民法上、2人以上の者が同一の証書です

共同遺言は認められていません。(民法第975条)

 

 なぜなら、内容的に互いに関連しあっている遺言を認めると、遺言が複雑化し

たり、各遺言者が自由に遺言を撤回や変更 できなくなったりして、最終意思の確

保という遺言本来の趣旨が阻害されるからです。

 

 ただし、同一の紙に書かれていても、全く独立の遺言で、切り離せば2通の遺言書

になるような場合は、共同遺言に該当しません。カーボン複写による遺言の有効性

についての判例(最判平成5年10月19日)では、内容的に独立していれば、カー

ボン複写は容易に切り離すことができるので共同遺言には当たらないとしました。

 

特別方式の失効

 特別方式による遺言(一般危急時遺言、難船危急時遺言、一般隔絶地遺言、船

舶隔絶地遺言は、普通方式の遺言(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)

よりも簡易にすることができますが、遺言者に危難などが迫っている場合などに例外

的に認められるものです。そのため、危難が去り遺言者が普通方式の遺言ができ

るようになったときから6か月以上生存したときは、効力を失います。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

遺言〜遺言の効力

遺言〜遺言の効力

遺言能力 

 要件に従って遺言がなされても、遺言者が遺言をするときに遺言能力を有して

いなければ、遺言は有効とはなりません。遺言能力を有し、完全に有効な遺言を

するには満15歳以上であることが必要です。

 

 ただし、満15歳以上であっても、意思能力がなければ、遺言能力を有するとは

言えません。意思能力とは、「自己の行為の結果を弁識するに足りる精神的な

」、つまり、自分の行為の性質や結果を判断することのできる能力のことです。

 

 そのため、遺言能力を欠く成年被後見人などは、事理を弁式する能力を一時的に

回復した時に、医師2人以上の立会のもとで行う特別な方式によらなければ有効な

遺言をすることはできません。

 

効力の発生時期

 遺言という意思表示は遺言書作成時に成立しますが、遺言の効力の発生は

遺言者の死亡時であり、遺言者の死亡までは、何の法律関係も生ぜず、期待

権ありません。 つまり、遺贈を原因として仮登記をすることもできませんし、

また、遺言無効確認の訴えを提起することもできません。

 

遺言の撤回

 遺言者は、いったん有効に成立した遺言でも、いつでも遺言の方式に従って、

遺言の全部または一部を自由に撤回することができます。また、この撤回する

権利は放棄することはできず、たとえば、遺言書に「この遺言は絶対に撤回しない」

などと記載したとしても意味はありません。

 

 撤回をする方法または撤回とみなされる場合には、以下のような形式があります。

@前の遺言を撤回する趣旨の新たな遺言の作成 

A前の遺言と抵触する遺言の作成

  →前の遺言の内容と抵触する遺言がなされると、抵触する部分について、

   後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。

B前の遺言と抵触する行為をした場合

  →前の遺言と抵触する生前処分その他法律行為がなされた場合は、遺言後の

   生前処分により遺言が撤回されたものとみなされます。

C遺言者が故意に遺言書を破棄した場合

  →遺言者が故意に遺言書を破棄した場合は、破棄した部分について遺言を撤

   回した者とみなされます。

D遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合

  →遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した時は、遺言を撤回した者とみなさ

   れます。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

遺言〜遺言の無効・取り消し

遺言の無効・取り消しについて

遺言の無効

 遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、遺言の全部または一部を自由に撤回

することができます。そのため、遺言の無効が問題となるのは、通常遺言者の死亡

になります。

 

 遺言が無効になる原因としては以下のようなものがあげられます。

遺言に特有な無効原因

方式違背

  法律に定める方式に従わなければ遺言は無効です。  

遺言能力の欠如

  満15歳以上にならなければ遺言能力がないので無効です。 

共同遺言

  2人以上のものが同一の証書でした遺言は無効です。

被後見人による後見人またはその近親者に対する遺言

  被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者

 若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言

 は、無効です。(ただし、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見

 人である場合には、適用されません。)

法律行為一般の無効原因

公序良俗違反

  公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする遺言は

 は、無効です。

錯誤 

  意思表示の重要な部分について錯誤があった場合は、その

 遺言は原則無効です。

 

遺言の取り消し

 遺言は、前述のとおり生前はいつでも撤回ができるため、遺言の取り消しを認める

意味はないように思えます。

 

 しかし、詐欺や強迫によって遺言書が作成され、その後遺言者が何らかの理由で

意識不明になり意思能力を失ったような場合には、遺言者は自ら撤回・取り消しを

することはできませんので、言者の代わりにその法定代理人に取消権を行使させ

る必要があります。なお取消権は相続人に相続されます

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

遺言〜遺言の執行と検認

遺言の執行と検認について

遺言の執行

  遺言の執行とは、登記の移転や物の引き渡し等遺言の内容を実現する

ための手続のことをいいます。遺言執行は、相続人によって行われることも

多いですが、遺言執行者を選任することもできます。

 

 相続人が複数いて相続人間の利益が相反するような場合などは、遺言

行者を選任することによって遺言の内容をすスムーズに実現にすることがで

きます。

 

遺言書の検認 

 検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせ、遺言書の形状、

加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確

にして遺言書の偽造・変造を防止する一種の証拠保全手続です。ただし、遺言

の有効・無効を判断する手続ではありませんので、検認を怠った場合は5万円

以下の過料に処せられますが、遺言としての効力には影響しません。

 

 遺言書(公正証書による遺言を除く。)の保管者又はこれを発見した相続人

は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その

検認を請求しなければなりません。

 

 また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会い

の上開封しなければなりません。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」 

遺言〜遺言執行者

遺言〜遺言執行者

遺言執行者について

 前述のとおり、遺言の執行は相続人自身が行うこともでき、遺言執行者の選任は

不可欠ではありません。ただし、子の認知相続人の廃除・取消場合には遺

行者を置かなければなりません

 

 子の認知、相続人の廃除・取消をするには、遺言執行者による、役所への届出や

家庭裁判所への審判の請求が必要になりますが、実質的に利益が対立する相続人

が遺言執行者になると、これらの手続を行わず自分に有利なように取り計らったりす

る可能性があるので、中立な立場の遺言執行者が必要になります。

 

遺言執行者の選任

 遺言執行者は、通常遺言によって指定されますが、指定されていないまたは指定の

委託がない場合、指定された者が就職を拒絶した場合、遺言執行者につき死亡、解

任、辞任、資格喪失などの事由が生じた場合等は利害関係人の請求によって家庭裁

判所が選任します。申立てをできる利害関係人は、相続人遺言者の債権遺贈

を受けた者です。

              

 遺言執行者に選任された者は、就職を承諾することも拒絶することも自由

ですが、承諾したときは、直ちに任務を行わなければなりません。また、利害

関係者には承諾するかどうかの返答を催告する権利があります。

 

遺言執行者の資格

 遺言執行者になるのに特定の資格は必要ありませんが、未成年者破産者は遺言

執行者になれません。なお、遺言執行者には、法人であってもなることができます。

 

遺言執行者の権限

 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利

義務を有します。遺言執行者は、まず遅滞なく相続財産の目録を調製して、これを

相続人に交付しなければなりません。そして、不動産の相続登記や預金の名義変

更などの相続手続きを行います。

 

 また、遺言執行者は、原則としてやむを得ない事由がなければ、第三者にその

任務を行わせることができず(遺言者がその遺言に反対の意思を表示したとき

は、この限りでない)、遺言執行者が複数いるときは、遺言に別段の定めがない

限り、保存行為は単独で、その他の行為は過半数で決して執行します。

 

遺言執行の費用等

 遺言執行者の報酬については、遺言に定めていればそれに従い、定めがない場合で

も、家裁判所が、相続財産の状況その他の事情を考慮して定めることができます。

 

 また、遺言執行の費用は、相続財産から支払われます。ただし、それによって

遺留分が減ずることはできず、受遺者が負担します。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」 

遺言〜相続と遺贈

遺言〜相続と遺贈

相続との関係

 遺贈とは、遺言により無償で他人に財産を与える行為のことをいいます。

遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分す

ることができます。「遺産の○割」、「遺産の○分の○」など一定の割合で財産

を指定する遺贈を包括遺贈といい、「甲土地を遺贈する」とか「○○銀行の

預金全部を遺贈する」など遺贈する財産を具体的に指定する遺贈を特定

といいます。

  

 なお、遺贈は単独行為であるため、遺言者の一方的な意思ですることが

でき、贈与契約とは異なります。

 

 遺贈によって利益を受ける者を受遺者といい、。民法第990条では、「

括受遺者(包括遺贈の受遺者)は、相続人と同一の権利義務を有する」と

規定されています。つまり、ここでいう包括受遺者は、相続人と同一の権利

義務を有するが、相続人そのものではないということになります

 

 そこで、問題となるのが遺贈と相続の関係です。相続では、被相続人は

産分割方法の指定相続分の指定をすることができますが、これらは見方

によって、遺贈と非常によく似た機能を果たします。

 

 

 では、これら相続の機能と遺贈はどのように区別するのでしょうか?

 

 相続と遺贈の相違点

  遺贈と遺産分割方法の指定には、以下のような違いがあります。

@遺贈は相手が相続人である必要はないが、遺産分割方法の指定・相続分の

 指定は、共同相続人間での遺産分割を前提としているので、相手は相続人に

 限られる。

A遺贈の場合、受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることが

 できるが、遺産分割方法の指定の場合、相続そのものを放棄しなければ放棄

 できない。

B登記手続きは、遺贈の場合、登記義務者たる相続人との共同申請になるが、

 遺産分割方法の指定の場合、単独申請での移転登記が可能。 

C目的物が農地の場合、遺贈なら所有権移転に知事の許可が必要だが、相続

 なら不要。

D平成15年の税制改正前は、登録免許税が遺贈なら課税標準額の2.5%

 で、相続なら0.6%であった。(現在は税制改正によりこの差異はあり

 ません。)

 

 例えば、被相続人Aに相続人として妻Bと子CDEがおり、子Dの夫としてF

がいた場合に次のような内容の自筆証書遺言を遺したとします。

 

@甲土地は、「Cの相続とする」

A乙土地は、「Fに譲る」

B丙土地は、「Eに相続させてください」

 

 この場合、Aについては、Fは相続人ではないので遺贈と見て問題ありま

せんが、@にBついては、C・Eは相続人なので、C・Eに対する遺贈と見る

こともできるし、遺贈ではなく、相続分は法定相続分での相続を前提とし、

遺産分割方法はCには甲土地を相続させ、Eには丙土地を相続させる意

思表示だという見方もできます。

 

 Dのとおり、現在は税制改正で遺贈と相続で差異はありませんが、平成

15年の税制改正前は、主に節税目的で遺贈ではなく遺産分割方法の

指定によって遺産を相続人に帰属させるために、「相続させる」という

文言を用い遺言が多くなされていました。また、どの財産を誰に帰

属させるかを指定することにより、遺産分割を不要にし、相人間

の遺産分割をめぐる争いが起こるのを防ぎたいという遺言者の希望

にも合致していました。

 

 当初、裁判所は相続させる」という文言を用いた遺言により、遺産分割

を不要にするという取扱いは認めていませんでしたが、その後の判決で、

この方式言により、遺産分割を経ることなく直ちに相続人に所有

権が帰属するという取扱いを認めました。 

 

相続との共通性

 遺贈と相続には以下のような共通点もあります。

@同時存在の原則

  遺贈の場合にも同時存在の原則が働きます(縁組前の子と縁組後

 の子の代襲相続についてを参照)。そのため、受遺者は遺言の効力

 発生時に生存していることを要し、遺贈者の死亡以前に受遺者が死

 亡したとき(遺贈者と受遺者が同時に死亡した時も含む)は、遺贈は

 効力を生じません。

 

  また、同時存在の原則に胎児の例外(民法第886、965条)が認

 められる点も相続と同じです。つまり、遺言効力発生時に胎児であれ

 ば受遺者として認められます。(ただし、胎児が死体で生まれたときは

 認められません)

 

A相続欠格者

 相続と同じく相続欠格者(詐欺・脅迫などによって遺言をさせた者など)

 は、受遺者になれません。(民法第891、965条)

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」 

遺言〜負担付遺贈

遺言〜負担付遺贈

負担付遺贈とは

 負担付遺贈は、遺贈の一種ですが、受遺者が遺贈を受けることができるのと

引き換えに一定の義務を負担するものをいいます

  

 受遺者は遺贈の目的の価額を超えない限度内においてのみ、負担した義

務を履行する責任を負います。つまり、遺贈を受けた財産等の価額を超えてまで

負担を負う必要はありません。また、遺贈の目的物の価額が遺留分減殺請求

の行使などで減少した場合、その減少した分に応じて、義務を免れます。ただ

し、遺言に別段の意思が表示されている場合は、その意思に従います。

 

 また、受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受

遺者となることができます。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したと

きは、その意思に従います。

 

負担を履行しないとき

 負担付遺贈によって受遺者が負担した義務を履行しない場合、 相続人は、 相当

の期間を定めて履行の催告を行い、 それでも履行がない場合は、 その負担付遺

贈にかかる遺言の取消しを家庭裁判所に対して請求することができます。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

遺留分〜遺留分の範囲

遺留分〜遺留分の範囲

遺留分とは

 遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に対して留保された相

財産の割合をいいます。

 

 被相続人は、自らの財産を生前処分や死因処分によって自由に処分する権

利があり、全財産を生前贈与や遺贈などによって第三者に与えることもできる

し、相続分の指定によって全財産を特定の相続人に相続させることもできます。

 

 しかし、それでは遺族の生活が脅かされたり、潜在的持分の清算に対する正

当な期待が裏切られる恐れがあり、相続制度の趣旨に反します。

 

 そこで、相続人の財産処分の自由と相続人の保護の調和を図るため遺留分

制度が置かれました。これにより、強行規定として、被相続人の兄弟姉妹以外

の相続人には相続開始とともに相続財産の一定割合を取得しうるという権利

遺留分権が認められます。遺留分権を有するこらの者を分権利者

といいます。 なお襲相続人にも遺留分権は認められま

 

遺留分権者

 前述のとおり、遺留分権は、兄妹姉妹以外の法定相続人(配偶者・子・直系

尊属)に認められ、これらの者が遺留分権者として扱われます。 ただし、遺留分

は、相続人に与えられる権利なので、相続欠格・廃除・相続放棄によって相続権

がなくなった場合は、遺留分も失われます。

 

遺留分率

 遺留分の割合(遺留分率)は相続人の構成により以下のようになります。

 

1.直系尊属のみが相続人の場合は被相続人の財産の1/3

2.それ以外の場合は全体で被相続人の財産の1/2

 

 なお、配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合には、被相続人の兄弟姉妹に

遺留分はないため、1/2の遺留分は全て配偶者に行きます。

 

遺留分の算定

 遺留分は被相続人の財産に遺留分率を掛けることによって算定されます。です

から、まず、算定の基礎となる被相続人の財産の範囲を確定することが必要です。

 

 算定の基礎となる財産は被相続人が相続開始の時において有した財産の価額

にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して算定します。

 

遺留分の基礎となる財産=

        相続開始時の財産+贈与した財産の価額−相続債務 

 

 条件付権利または存続期間の不確定な権利については、家庭裁判所が選任し

た鑑定人の評価に従って、その価格を定めます。


 相続開始時の財産に加える贈与した財産とは、どのくらい前の贈与をいうの

でしょうか?これについては、原則として相続開始前の1年間にしたものに限

その価額を算入します。これは、贈与契約の時点が基準となりますので、履行

が1年以内になされたものであっても、契約が相続開始前1年間より以前であれ

ば遺留分の基礎となる財産には算入されません。

 

 ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたと

きは、1年前の日より前にした贈与についても、その価額が算入されます。この

損害を加えることを知って」ということに関しては、贈与契約時に遺留分を侵害

すると認識していただけでなく、将来も遺留分の侵害が続くと予見していたこ

が必要とされます。なぜなら、被相続人からすると相続開始までどれだけ時間

があるかわからないため、第三者に財産の大部分を生前贈与したとしても、それ

だけでは遺留分権者に損害を加える認識があったか判断できないからです。

 

 「贈与した財産の価額」については、相続開始時の貨幣価値に換算して評価し

ます。

 

特別受益

 生前贈与が相続人に対してなされ、それが特別受益とされる場合は、特別受

益者の相続分に関する民法第903条が準用され(民法第1044条)、1年以上

前の贈与もすべて加算されます。また、加算された贈与については、減殺請求

を認めることが生前贈与を受けた相続人にとって酷であるというような特段の

事情がない限り、遺留分減殺の対象になるとされています。(最判平成10年

3月24日民集52巻2号433頁)

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」 

遺留分〜遺留分の放棄

遺留分〜遺留分の放棄

放棄の制限

 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限

り、認められます相続人の一人が遺留分の放棄をしたからといって、他の相続

人の遺留分が増えたりすることはなく、単に被相続人が自由に処分することがで

きる財産が増えるだけで、他の相続人の遺留分には影響を及ぼしません

 

 また、遺留分を放棄したとしても、相続を放棄したわけではないので、相続が開

始されれば相続人となります。ただし、遺留分を侵害されたとしても権利を主張す

ることはできなくなります。

 

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」

遺留分〜減殺請求の方法

遺留分〜減殺請求の方法

侵害額の算定 

 遺留分の侵害があったときには、遺留分権利者は侵害された額を取り戻すことが

できます。この権利を遺留分減殺請求権といいます。

 

 遺留分の侵害があったといえるためには、相続によって最終的に相続人が手

する金額が遺留分額より小さい(少ない)ことが必要です。 

 

遺留分減殺請求権者

 遺留分減殺請求権者は、遺留分権利者及びその承継人です。承継人とは、

遺留分権利者の相続人や、減殺によって取り戻すべき財産を譲り受けた者の

ことをいいます。
 

減殺請求の相手方

 減殺請求の対象は前述のとおり(遺留分の範囲参照)、遺贈及び相続開始

1年前までの贈与(それ以前の特別受益)当事者双方が遺留分権者に損

を加えることを知ってなした贈与です。つまり、減殺請求の相手方は、これら

遺者及び受贈者です。

 

減殺の意思表示

 遺留分減殺請求権の行使は、受遺者や受贈者に対する権利者の一方的な意

思表示であり、裁判上で行使される必要はなく裁判外でもできます。

 

 ただし、遺留分減殺請求権には期間制限があり、遺留分権利者が、相続の開

始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間または、

続開始の時から十年経過すると、時効により消滅します。

 

減殺の順序・割合

 減殺の順序と割合は、以下の通りです。

  @ 減殺されるべき遺贈、贈与が複数あるときは、まず遺贈次いで贈与が減

    殺されます。

  A 遺贈が複数ある場合には、遺留分権利者は減殺の対象財産を選ぶことは

    できず、遺贈全体につき価額の割合に応じて減殺されます。なお、遺言者

    がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従います。

  B 減殺すべき贈与が複数あるときは、新しい贈与から順に減殺します。

    ただし、死因贈与は遺贈に近いため。1番最初に減殺します。
  

参考文献:「東京大学出版会 民法W 親族・相続 内田 貴著」